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脳神経外科

勤務医紹介

  • 弘田 祐己(脳神経外科部長)
    日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医
    日本脳卒中学会認定 脳卒中専門医
    日本脳卒中学会認定 脳卒中指導医
    日本脳神経外科学会 脳血栓回収療法実施医
    日本脳神経血管内治療学会 専門医

    日本神経内視鏡学会 技術認定医

  • 藤澤 博亮(脳神経外科医師
    日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医
    日本脳卒中学会 認定脳卒中専門医


《当院での新しい脳卒中診療体制について》

 2022年7月より、当院にて脳血管内治療を導入しております。そのため脳血管内治療による手術(カテーテル治療:脳動脈瘤に対するコイル塞栓術や、頚動脈狭窄症に対する頸動脈ステント留置術、急性期脳梗塞症例に対する経皮的脳血栓回収術 等)にも対応できるようになりました。当院の脳卒中診療において、従来の内科的治療、直達手術(開頭手術)に新しく脳血管内治療を加え、より盤石な体制を整えました。
また脳卒中学会より、2022年9月から「1次脳卒中センター」及び「日本脳卒中学会認定研修教育施設」に認定されました。そこで今回、具体的に脳卒中の紹介と、当院での新しい脳卒中診療体制に関し、脳血管内治療のご紹介とともにご説明させていただきます。(図1)
 脳卒中とは、いわゆる脳血管障害の中の脳出血や脳梗塞、そしてくも膜下出血の総称です。これらの疾患の特徴として、なにも症状の無かった方が突然発症することが上げられます。具体的には(顔がゆがむ、呂律がまわらない、一側の手足の動きがわるい/一側手足のしびれが出た、言葉がでない/理解できない)等の症状が突然起こります。くも膜下出血に関してはこれまでに体験したことがない(バットで殴られた様な)頭痛が特徴的です。速やかにCTやMRIで画像精査そして診断・治療を開始することが重要であり、上記の様な症状を呈した場合は救急車での来院も考慮される方が良いと思われます。

 当院の一般外来や救急外来にて脳卒中を疑う症例が来院された場合、CT/MRIをはじめとした画像検査や生理検査を速やかに行い、適切な診断や治療を迅速に行える体制を常時整えております。これらの検査結果から必要に応じ、アルテプラーゼ(t-PA)静注療法や脳血管内治療(急性期脳梗塞症例に対する脳血栓回収療法や局所線溶療法、くも膜下出血に対するコイル塞栓術 等)、開頭手術等の高度な医療にも常に対応することができます。

 脳血管内治療(カテーテル治療)は脳神経外科診療領域において比較的新しい治療方法であり、従来の開頭術と比較すると侵襲(お身体への負担)が少なく、カテーテル等の機材の発達もあり、ここ10年で飛躍的に進歩を遂げたものでもあります。特に急性期脳梗塞に対する脳血栓回収術はその有効性が高く評価されており、現在脳卒中診療における脳血管内治療の重要性は著しく高まっております。上述の通り、昨年度より当院でも脳血管内治療を導入することができました。具体例を以下に記載させていただきます。今後あらゆる脳血管内治療に対しても対応できるよう努めていきます。

① 急性期脳梗塞症例に対する脳血栓回収療法(図2)

急性期脳梗塞で来院された方の中で、特に脳血管主幹動脈閉塞(太い脳血管が詰まっている)を認める方が対象となります。様々なデバイス(カテーテル機材)を用いて直接血栓を回収し、血管を再開通させることで、症状の改善を図ります。適切な画像診断が重要であり、適応があれば速やかに治療を行います。従来のt-PA静注療法も併用することができますが、残念ながらt-PAが適応とならない、あるいはリスクが高い方でも条件次第では脳血栓回収療法を受けることができます。

② 頚部内頚動脈狭窄症に対するステント留置術(図3)

年齢や動脈硬化(高血圧や糖尿病、喫煙・飲酒等の生活習慣の乱れが要因なことが多いです)に伴い、頚部の内頚動脈が狭窄をきたす場合があります。狭窄が高度になると、狭窄部周囲で血流に乱れが生じ、結果として脳梗塞をきたす方がおられます。あるいは柔らかいプラークの存在のため、脳梗塞を発症する方もおられます。中には脳梗塞を発症され、検査で頚部内径動脈狭窄を指摘される方もいます。本治療はこの狭窄部にステントを留置することで、血管の狭窄を改善し、またプラークの破綻を防ぎ脳梗塞発症の予防を図ることが目的となっております。

③ 破裂脳動脈瘤によるくも膜下出血症例に対するコイル塞栓術(図4)

くも膜下出血の原因である破裂脳動脈瘤に対し、コイル塞栓術を行うことで再出血予防を図ります。従来の開頭術は直接脳の溝を広げ血管を直視し、動脈瘤基部でクリッピングを行い脳動脈瘤の血流を遮断することで再破裂を予防しておりましたが、本治療は脳動脈瘤内へ血管の中からカテーテルを誘導し、瘤内にコイル(形状記憶を持つ細長い針金のようなもの)を詰めることで脳動脈瘤の血流を遮断し、再破裂の予防を行います。

チーム医療

 また脳卒中診療において必要不可欠なのが、チーム医療です。当然のことながら、一人の医師の能力だけでは脳卒中診療を行うことができません。当院では脳卒中症例発生直後より、様々な職種が参入します。具体的には速やかな診断から速やかな治療に至るための各部署間(他科の医師や救急外来看護師・検査担当看護師、放射線技師、臨床検査技師・臨床工学技士) でのシームレスな連携を意識しております。
 入院後は手術・点滴・内服だけでなく、理学療法士、作業療法士、言語療法士が常駐しており急性期リハビリテーションも早期より開始しております。また治療方針に対する多職種で行うカンファレンス(病棟看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語療法士、栄養管理士、地域連携室相談員が参加します)を通し、多種多様な部門で患者情報の共有を行い、それぞれの専門分野で見た問題点を指摘しあい、各々の患者さんに最適な治療を追求していきます。(図5)

医療連携

 さらに当院では医療連携にも力を注いでおり、近隣の病院・診療所から脳卒中症例あるいは脳卒中が疑われる患者を多くご紹介いただいております。また急性期治療を終えた後は、患者の様態にあわせ近隣の回復期リハビリテーション病院、慢性療養型病院、かかりつけ医へご紹介させていただき、患者さんだけでなくその御家族の方々も満足していただけるように努めております。(図6)
 脳卒中診療は時間との闘いであり、Time is brainと例えられることもあります。柳井医療圏での脳卒中診療において、少しでも貢献できるよう、今後も努力を惜しまない所存でありますので、救急患者をはじめ、脳卒中を疑う患者がおられましたらご遠慮なく当院へお問い合わせを頂ければと思います。これからもよろしくお願いいたします。

概要

対象:脳卒中(くも膜下出血、脳内出血、脳梗塞等)、脳腫瘍、頭部外傷、機能脳神経外科(顔面けいれん・三叉神経痛)、小児脳神経外科(先天奇形等)を加療対象としています。

  • 頭痛、手足のしびれ、麻痺、けいれん、意識障害、言語障害、歩行障害、視力・視野障害、複視、めまい、顔面のけいれん・痛み、痴呆等の症状の精査を行います。
  • 主な医療機器は、手術用顕微鏡・超音波メス・CT・MRI・脳血管造影(DSA)装置・局所脳血流検査装置・経頭蓋ドップラー・低体温治療用冷却装置・誘発電位・脳波・頚部超音波・Linac等があります。
  • 脳梗塞急性期のt-PA治療や、慢性期の脳血流検査などを行っております。
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